コモディティ取引へのブロックチェーンプラットフォームの活用
ブロックチェーン技術は、暗号通貨ビットコインを基盤とするアーキテクチャとして最初に登場しました。
同技術は、リアルタイムで自身の情報記録を更新し、第三者検証を必要とせずにコンピューターアルゴリズムを使用してトランザクションを数分で処理及び解決できる共有データベースです。
貿易において、各過程に正確なタイムスタンプがあれば、理想的には貨物の所有権を混乱させることなく、リスク(不確実性)をより正確に把握し管理することができるようになります。
コモディティ取引の貿易にブロックチェーンを活用することで、ガバナンス上の運用リスクと物理的エネルギーのコストを削減し、バックエンド取引の信頼性と効率を向上させることができるため、貿易金融へのブロックチェーン活用は非常に期待されています。
Vakt(石油取引プラットフォーム)
石油会社大手のBP、シェル、エクイノールが、大手銀行及び商社とタッグを組んだブロックチェーン上で動作するエネルギー商品取引向けプラットフォーム「Vakt」を11月末に立ち上げる予定であることがわかっています。
Vaktには、上記石油会社3社の他、銀行のABNアムロ、ING、ソシエテジェネラルや、商社のガンバー、コック・サプライ&トレーディング、マーキュリアなどが参加しています。
17年11月に初めて発表されたこのブロックチェーンソリューションは、業界の煩雑なペーパーワーク(紙ベースの取引契約や業務文書)をデジタル化やスマートコントラクトへ移行させて効率化を図ることが主要な目的です。これにより、事業運営にかかる時間や労力、エラーが削減され、取引をより効率的にすることが可能になります。
11月12日にロンドンで開催された「S&Pグローバル・プラッツ・コモディティサミット」に参加したVaktのリヨン・ハードグレイブ製品開発担当副社長は、プラットフォームは11月末までに北海石油市場でリリースされると述べ、同氏は今後のプランについても「Vaktには、ARAバージ、海運市場、及び米国産原油パイプラインでも検討することになるだろう。更に、石油化学製品や米国産ガスの取り扱いを要望する声も届いている」と言及しています。
komogo SA(融資、コモディティ取引プラットフォーム)
大手グローバル銀行や商社、大手資源企業のグループが、コモディティ取引への融資を行うブロックチェーンベースの新プラットフォームを手掛ける合弁企業を立ち上げます。
設立された合弁企業は「komogo SA」といい、スイス・ジュネーブに本社を置きます。この企業は、数多くの銀行や商社、資源関連企業によって設立されています。
ABNアムロ銀行、BNPパリバ銀行、シティ、クレディアグリコル銀行、Gunvor、ING、マーキュリア、三菱UFJ銀行、ナティクシス、ラホバンク、シェル、SGS、ソシエテジェネラルなど、Vaktと重なるメンバーが名を連ねています。
新会社のkomogoは、ブロックチェーンベースのオープンなプラットフォームにて、コモディティ取引と財務プロセスのデジタル化を行う予定です。プラットフォームの開発はイーサリアムのブロックチェーンインフラを手掛ける「ConsenSys(コンセンシス)」と共同で進めています。
オランダのABNアムロ銀行が9月19日に発表したプレスリリースによると、komogoの機能は大きく2つになります。
まず、顧客確認(KYC)プロセスの標準化と促進を行い、デジタル信用状により顧客が希望する銀行に、コモディティハウスやほかのプラットフォームがデジタルな取引データや文書を送信できるようにします。
komogoは年内に稼働する予定で、初期の段階では主に資源業界で利用され、まずは北海での原油取引で利用されます。
来年以降は、農産物や貴金属取引での利用も目指します。
そして、komogoはブロックチェーンを活用した石油取引プラットフォームであるVaktととも連携していくといい、他のプラットフォームと接続できるように設計されています。
まとめ
取引プラットフォームでも決済プラットフォームでもなく、暗号通貨も含まれていませんが、ブロックチェーン技術は取引の要約、確認、契約、ロジスティクス(物流)に役に立ちます。
Vaktでは、サイバーセキュリティ、効率、貿易金融の側面において役立ちます。
三井住友海上とNTTデータの海上保険への実証実験完了のニュースにもあるように、貿易への活用が非常に期待されています。
東京海上日動とNTTデータ、ブロックチェーンを活用した外航貨物保険の保険金請求の実証実験が完了