導入
先日、Bitcoin.comの主任開発者であるコービン・フレイザーにより発表された新しいツールにより、開発者が”Bitcoin.com”にホストされる形で、ビットコインキャッシュのブロックチェーン上でトークンを発行することができるようになります。
このトークン発行が可能になったのは、ワームホールプロトコルの登場のおかげだといわれています。このプロトコルは、既存のERC-20に対抗する可能性があります。
トークンとは?
仮想通貨市場は、コインとトークンで構成されます。
コインは、ビットコインやイーサリアムなどで、独自のブロックチェーン基盤をもつ仮想通貨を示します。
一方で、トークンは、既存のブロックチェーン基盤をもとに開発されるが、多くがイーサリアムプラットフォーム上で構築されています。スマート契約やERC20互換トークンなどが、イニシャル・コイン・オファリング(ICO)と相性が良いためです。
ICOは、一般的なスタートアップが自社の分散型アプリケーション(DApp)の概要を説明するホワイトペーパーを発表し、投資家からの資金調達を行い、その替わりに自社トークンを配布します。
ERC-20トークンについて
そのICOの際に、トークンを作成するのに最もよく使われるプロトコルがイーサリアムブロックチェーン上の「ERC-20トークン」です。
ERCは「Ethereum Request for Commnets」の略です。
ERC-20は、ユーザーフレンドリーに定義された原則と、単純化された構造によるプログラミングの簡易性により、爆発的な人気を獲得しました。
ICOウォッチリストから入手したデータによると、そういったトークンはトークン市場全体の80%以上を占めています。
基本的には、Githubからテンプレートをコピー&ペーストし、トークンの総量、名前、そしてシンボルを決め、幾らかのガスとイーサリアムを投入するだけで、新しいトークンを作成することができます。
こういった便利性から、2017年、ICOの流行において、ERC-20は重要な役割を果たしました。同時に、ERC-20が提示した統一したプログラミング基準が、これまでバラバラだった基準のために、取引所やウォレット、その他アプリケーションとのやり取りにおける互換性のなさを解消しました。従来のように互換性を確保するため、トークンのソフトウェアをアップグレードする必要性などがなくなったわけです。
ERC-20の欠点
ERC-20は、その利便性から爆発的な人気を得たわけですが、時間の経過とともに問題や欠点が顕在化しています。
最も有名な事例が、バッチオーバーフローというバグです。
スマートコントラクトの宛先アドレスに、イーサリアムのかわりに誤ってERC-20互換トークンを送ってしまった場合、その資金はスマートコントラクト内に捕らわれたままになってしまいます。
このバグにより、ICO参加者は300万ドル以上を失っているのにも関わらず、ERC-20の開発者はユーザーエラーだとして、バグの改良を行っていません。
ワームホール(Warmhole)とは?
ユーザーは基本的にワームホールプロトコルによりビットコインキャッシュのブロックチェーンの合意ルールを変更することなく(フォークすることなく)、スマートコントラクト機能を実装できます。
ビットコインキャッシュ自体は、17年8月にビットコインからハードフォーク(本来のブロックチェーンのルールとは異なる新ルールを適用し分岐する方法)し、ネイティブのビットコインブロックチェーンとは分岐したものであり、その目的が自らを取引通貨として位置づけたいということでした。
ワームホールプロジェクトは、仮想通貨マイニング大手のBITMAIN(ビットメイン)の開発者チームが主導しており、注目度が高いといわれています。
また、ワームホールプロトコルは、ワームホールキャッシュ(WCH)と呼ばれるネイティブトークンをサポートしており、このトークンはビットコインキャッシュブロックチェーン上のスマートコントラクトの燃料になり、新規トークンの作成やトークンの上場などの場面で使用されます。
このワームホールキャッシュ(WCH)は、8月1日仮想通貨取引所CoinExに上場しています。
ワームホールは、BCHをバーンすることで裏付けされるテザー(Tether)と同様のプロトコル「Proof od Burn(プルーフオブバーン)」プロセスを使用して発行されます。ワームホールでトークンを発行する際、ユーザーはBCHを専用の「バーンアドレス」に送金します。送金されたBCHは、1BCHごとに100WHCの割合で発行されます。
今後、ワームホールプロトコルベースの分散型取引所やERC-721との統合、スケーラビリティ対策でプラズマプロトコルの実装などを目指し、イーサリアムブロックチェーン上でのトークン発行で指摘されていた欠点を解消する方向を目指します。
まとめ
ワームホールプロトコルは、ERC-20に替わることを期待して開発された他の多くのERC系のプロトコルとは異なり、既に2300BCHがバーンされているなど、新たな用途として期待されていることがわかります。
また、イーサリアムプラットフォームの致命的な欠点である、スマートコントラクト契約とブロックチェーンのレイヤーが同じであることから、スケーラビリティ進行速度が速くなってしまうためにおこるガス高騰問題も一時的に解消することができます。