目次
はじめに
ブログ圏や報道機関で、テザーへの疑惑が高まっており、仮想通貨への信頼が大きく揺るがしています。
ここ一年で大量のテザーが発行されており、投資家からの需要によるものなのかもしくはその裏付けのない供給駆動のものなのかという疑惑が膨らんでいます。
これに対して、テザー社は、正式な監査結果を発表しないばかりか、銀行や監査法人との提携を失っており、さらに、テザー社と大手仮想通貨取引所Bitfinexの経営陣が同一であり、データとしても大きな癒着が発見できます。
上図は、テザーの発行から取引の流れを追ったものです。
流れは右回りで、それぞれのノードは流入と流出の量に比例したサイズになっています。
発行されたテザーは、まずビットフィネックスに流され、その多くがポロニエックスやビトレックスでの交換に使用されます。
テザーは、また別の取引所や実体へ流れ、時間の経過とともに交換の媒体としてより拡散しており、この点が研究をより困難にしています。
テザーとは
テザーは、ドルに担保して価格が一定である仮想通貨で、投資家がTetherLimited社へドルを供給すると、その分テザーが発行されるProof of Reserveの仕組みを採用しています。
仮想通貨Tether(テザー)を解説!
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テザー社の発表
6月20日、ついにテザー社は、第三者機関によるUSドルの裏付けを示す報告書を発表しました。
この報告書は、「Feeh Sporkin&Sullivan LLP(FFS)」と呼ばれる、ワシントン拠点の弁護事務所により、市場に出回っているUSDTの総量と、テザー社が保有する銀行口座の米ドル預金の残高を証明しています。
Feeh Sporkin&Sullivan LLP(FFS)とは?
FFSは、元FBI長官を含む三人の元連邦裁判官によって設立され、米国政府で数十年にわたる最高レベルでの裁定経験をもち、ガバナンス、コンプライアンス、ビジネスにおける公平性に関する幅広い知識と国際経験をもつ、有力事務所であるようです。
懸念点
依然として公認会計事務所による監査ではないこと
テザー社は報告書の中で、同社への厳しい疑惑の目が向けられていたことにより、透明性を示す誠意が必要であることを強く認識し、このような発表に至ったと述べています。
一方で、この報告書は、正式な公認会計事務所による監査を経ているわけではなく、残高と取引量の証明に過ぎません。
また、ブルームバーグ紙の電話インタビューに対し、Hoeger氏は、アメリカ四大監査法人がそのようなリスクを負うこと(テザーの監査を実施すること)は考えられないと語っており、既に多くの銀行や監査法人との提携を切られており、今後もそういったことは為されることは考えにくいでしょう。
6月1日時点での残高であること
テザー疑惑に関する論文で発表されているように、一連の原因は、テザー発行主体による供給駆動であり、ビットコインの価格下落に際してテザーが発行され、安く購入し、価格操作を行い、高騰した月末に買戻し、ビットコインをUSドルに替え、銀行取引明細書上での整合性を保っているという説が有力です。
実際に、論文の中でこういったことを示すデータが取られています。
一連の価格操作が公になり、続けることが難しいと考えられたうえでのこのタイミングでの取引明細書の発表であるかもしれません。
まとめ
結果として、今回の報告書は経過報告であり、依然としてテザー社への疑惑は晴れません。
テザーの採用する認証アルゴリズムProof of Reserveが、スマートコントラクトによる自動発行プロトコルではなく、中央管理の発行体による人為的なプロセスであることが原因です。
それにも関わらず、外部監査機関による精査を避け、投資家はその利便性から使用を辞めません。
既にテザーは仮想通貨時価総額上位に位置し、多くの取引や売買で使用されています。
加えて、トランザクションには、そのプライバシーと利便性から、複数のUTXOモデルによるアドレスを使用するのが一般的で、これが追跡や調査をより困難にします。
こういった価値をペグして発行する仕組みのモデルは、今後はスマートコントラクトによる自動発行プロトコルに置き換えるべきであると考えます。
6/27 更新
約275億円のUSDT発行
6月25日、テザー社は新たに275億円相当のテザーを発行しました。ビットコイン価格は70万円台を割り、65万円台まで軒並み低下を続けていましたが、今回一時69万円台まで値を戻しました。
なお、現在は依然として不安定な相場を示しています。
Bitfinex最高戦略責任者の辞任
ロイター通信によると、CSOを務めるPhil Potter氏が辞任することが明らかになりました。同紙によると取引所Bitfinexとテザー社の最高戦略責任者である同氏は、解雇ではなく自主的な辞任であようです。
両企業は昨年12月に米CFTCから監査召喚状を受けており、6月上旬に提出された「情報自由法案」に基づいた申請を同規制局に却下されています。
参考
「テザー財政審査結果『流通量を上回る裏付け資金』と公表|正式な監査は依然として必要」
http://coinpost.jp/?p=33275&from=new_top
「is bitcoin really un-tetherd?」
https://www.macrobusiness.com.au/wp-content/uploads/2018/06/SSRN-id3195066.pdf
tether 公式
Bitfinexの最高戦略責任者が辞任、海外へ業務移転か|270億円分のテザー発行も話題