2017年末の仮想通貨ビットコインの高騰から、現在、空前の仮想通貨ブームとでも言える流れが起こっています。新たに投資を始める方や、仮想通貨に触れる方も増えているでしょう。
こうした中で耳にするのが、ある疑問です。仮想通貨取引所はいろいろあるけど、仮想通貨交換業者、みなし業者なんて言われていて、実際のところ何がどう違うのかという疑問。そして、コインチェック問題によって生まれた、みなし業者が危険かどうかという疑問。この記事ではこうした疑問に答えていきたいと思います。
目次
そもそも仮想通貨交換業とは
まず、端的に言ってしまいましょう。現時点で、みなし業者を仮想通貨の取引を行うために利用するのは危険です。資産を失う危険もあると言って過言ではないでしょう。
金融庁からの規制も入り、今後みなし業者はなくなっていく流れにあると言えます。こうしたみなし業者の問題、そして、規制をめぐる問題に入っていくために、その前提として、そもそも仮想通貨交換業とは何であるかを見ていきましょう。
仮想通貨交換業とは取引所と販売所のこと
皆さんが仮想通貨取引で目にするbitfyerやZaifなどの仮想通貨取引所、あるいは販売所を営む事業者を、現在金融庁は、「仮想通貨交換業」を営むもの、つまり「仮想通貨交換業者」として定義しています。
もともと、IT関連の新たな技術だった仮想通貨は、IT関連のスタートアップ企業によってその取引が行われてきました。記憶に新しい、コインチェックの和田元社長も東工大卒のエリートプログラマー、古い話でいえば2014年に起こった大規模なビットコイン流失事件の舞台となった取引所、Mt.Gox社のCEOであった、マルク・カルプレス氏もプログラマーです。
ビットコインの知名度向上によって市場規模は拡大し、そしてそれによってビットコインの資産としての価値が向上しました。世界でも有数の取引高を誇る日本において、仮想通貨と取引所は、単なるIT技術を超えて金融資産、そしてそれを扱う金融業としての様相を帯びてきました。
こうした仮想の資産に関する事例はこれまでに例がなく、苦慮した結果生み出されたのが、金融庁による「仮想通貨交換業」の定義です。
日本は国が初めて仮想通貨を資産と認めた国
日本は、いち早く仮想通貨をデジタルな資産であるとして認め、投資家を守るための仕組みづくりに向けて動き出しました。
平成28年(2016年)には、仮想通貨交換業の定義を含めた改正資金決済法が、続く29年(2017年)には、顧客を守るため、セキュリティ、資産管理、業務体制など多岐にわたる審査項目にのっとった仮想通貨交換業者登録制度が設けられ、運用が開始されました。
金融庁登録事業者とみなし業者の違い
平成29年(2017年)に、金融庁による仮想通貨交換業の登録制度が開始されてすぐに、16社の仮想通貨交換業者が申請を行い、登録が認められました。
以下16社がその時に登録された仮想通貨交換業者です。
マネーパートナーズ
QUOINE
bitFlyer
ビットバンク
SBIバーチャルカレンシーズ
GMOコイン
ビットトレード
BTCボックス
ビットポイントジャパン
フィスコ仮想通貨取引所
テックビューロ
DMM bitcoin
ビットアルゴ取引所東京
Bitgate(旧FTT)
Xtheta(シータ)
BITOCEAN
金融庁は、登録事業運用開始後は基本的に登録された事業者しか仮想通貨交換業を営むことができないよう仕組みを作りました。
ですが、当然ながら事業開始以前に事業を始め、顧客を獲得していた取引所も存在していました。そうした背景があり、金融庁は顧客保護、市場の混乱を避けるといった目的から例外を作ります。それが「みなし業者」です。登録の申請を行った交換業者は、仮に登録がされなくても申請した事実だけで業務を続けることが認められたのです。
そうしたみなし業者の代表例が、2018年初頭に過去最大規模となる仮想通貨流出事件を起こしたコインチェックになります。
コインチェック問題に見るみなし業者の問題
金融庁の登録制度が運用された当初はそもそも、人気を集め始めたとはいえ、仮想通貨自体がまだ一般的ではなく、一部の人間が取引しているような状態でした。
よって、実際のところ、そこまで大きくみなし業者の問題が取りざたされることはなかったのです。ただ、その一方で、大手取引所の一つであったコインチェックが登録されないことに関しては注目が集まっていました。
そんなさなか、2018年1月にあのネム流出事件が起こったのです。
セキュリティに問題が
この事件では、和田社長の独特な人柄や会見での立ち居振る舞いも話題になりましたが、最も大きな問題として注目を集めたのがセキュリティ体制です。
仮想通貨は、デジタルな資産です。インターネット上を介して管理されているわけですが、ハッキングなど外部からの攻撃から守るため、莫大な量の資産を扱う仮想通貨取引所では、インターネット環境から隔離して仮想通貨を保存する、ハードウェア(コールド)ウォレットという管理方法が主流になっていました。
なんのことかいまいち、という方は、セキュリティ体制の整ったUSBやハードディスクドライブのようなデバイスを想像していただければいいかと思います。
調査を行っていく中で、コインチェックは、ネムの管理にハードウェアタイプのウォレットを利用していないことが明らかになったのです。インターネットにつないだまま仮想通貨が管理されていた、つまり、ネム流出事件はあるべくして起こったようなものだったわけです。
そもそも事業自体に問題が
また、セキュリティ問題以外にも、金融庁からの行政指導による監査が入った際に、関連資料や仮想通貨の管理以前のセキュリティ体制の不備が次々と明らかになりました。コインチェックはそもそも、顧客の資産を預かる金融事業者としてあるべき事業を行ってすらいなかったのです。
こうしたコインチェックのずさんな、ひいては金融庁の登録を受けていないみなし業者のずさんな経営体制が明らかになったことにより、みなし業者に対する規制はより強化されていくことになりました。
肝心のコインチェック自体は、現時点でみなし業者のままです。ですが、2018年4月に金融大手マネックスグループに完全子会社化され、傘下の一企業になりました。
現在はマネックスグループの指導の下、仮想通貨交換業者登録に向けて目下動いているようです。
規制強化により、みなし業者はなくなっていく
金融庁はコインチェック事件ののち、相次いでみなし業者に業務監査、場合によっては業務停止命令を行うなど、規制を強めてきました。
金融庁の規制強化により、みなし業者は残すところ8社に
こうした規制強化の流れを受けて、16社あったみなし業者のうち8社が登録申請を取りやめ、事実上仮想通貨交換業を廃業しています。
現在の金融庁が提示する仮想通貨交換事業者の登録基準は、詳しくは明らかにされていません。ただ、大まかなガイドラインは設定されています。ガイドラインによれば、重要視されているのはセキュリティを含むシステム管理体制、マネロン・テロ資金提供対策、分別管理体制、利用者保護に向けた取り組みの四つです。
みなし業者の減少は、単純に悪質な事業者が運営を取りやめた、ととることもできます。ですがその一方で、金融庁が提示した基準は、中小規模の企業ではとても対応できるものではない、との声も上がっており、事実上企業の淘汰が起こっているとする声もあります。現に、SBIやDMMなど大手金融事業者が、登録仮想通貨交換事業者に含まれています。
他方、仮想通貨の基幹技術であるブロックチェーンは、世界を一変させる可能性のある新たな技術としても注目を集めています。政府機関である金融庁のこうした急激な態度の硬化は、イノベーションを妨げる危険性があるとする声も上がっているのです。
金融庁登録交換業者による、自主規制団体に期待の声も
そうした流れを受けてか、政府機関の過度な規制を防ぐために、金融庁登録16仮想通貨交換業者による自主規制団体が、2018年4月23日に発足しています。
まだ、この自主規制団体は大きな動きを見せているわけではありませんが、業界内で共通のルールを設けることによって、取引、技術革新を持続的に行っていくことを目指しているようです。
まとめ:2018年は大手参入の年。取引所淘汰の流れへ?
様々な動きが錯綜している仮想通貨業界ですが、一つ言えることがあります。2018年の大手金融機関による本格的な仮想通貨市場参入です。SBIホールディングスや、三菱東京、コインチェックを買収したマネックスがその良い例でしょう。
すでに技術力、資本力など圧倒的に上に立っているこれら事業者が参入することにより、日本仮想通貨交換業者の淘汰が予想されています。この淘汰により、安全な環境で仮想通貨取引を行うことができるようになるでしょう。ただ、その一方で、仮想通貨が振興の技術であることは依然として変わりません。
大手金融事業者参入による淘汰が、技術的なイノベーションにどのような影響が与えるかに関しては、今後注目していく必要があるでしょう。