今回は、中国における仮想通貨の規制と現状について取り上げます。
中国では昨年、ICOの禁止によって実質的に取引所が閉鎖されることになりましたが、それにも関わらず、海外取引所を経由した仮想通貨の取引が盛んに行われています。
また、電気代が安く、安価なハードウェアを入手できるといった理由から、規制前まではマイニングも非常に活発で、世界のビットコインマイニングの80%が中国で行われていました。
このような特殊な状況を考慮して、中国の仮想通貨の実情と中国政府による規制に着目していきます。
目次
中国の仮想通貨事情
ビットコインの普及
中国では、2012年にビットコインが普及し始めました。
当時は、富裕層や出稼ぎ労働者による海外送金が、ビットコインを中心とした仮想通貨が利用される大きな目的でした。その規模は非常に大きなもので、一時はビットコイン普及率が世界第1位になるほどでした。また、中国のビットコイン取引所が、世界の取引所の取引量第1位と第2位を独占することもありました。
このように、取引が禁止される前の中国は、まさに仮想通貨大国でしたが、仮想通貨が国民生活に深く浸透していたわけではありませんでした。2014年に上海のカフェにビットコインのATMが設置された例外はありますが、街中のいたる所に仮想通貨のATMがあったり、多くのお店で支払いに使えたりしたわけではなかったのです。
中国では、海外送金や投資を目的とした仮想通貨の保有がメインでした。これは、仮想通貨取引禁止後の現在も変わりません。
中国における仮想通貨への期待
中国では、海外送金に加えて投資も仮想通貨保有の主な目的ですが、中国の投資家は仮想通貨にどのような期待を寄せているのでしょうか。ここでは、中国のビットコイン投資家を例に考えていきます。
中国のビットコイン投資家は、短期間で利益を得ようとするタイプ、ビットコインの長期的な発展を信じるタイプ、投資のリスク分散のためにビットコインを保有しているタイプに分けられると言われています。彼らは、ビットコインの価格の暴騰を望んでいるわけではなく、投資商品としての成熟を期待しています。
このような中国の仮想通貨投資家のスタイルは、日本の仮想通貨投資家に似ていると言えるでしょう。
なぜ仮想通貨の取引・保有が活発になったのか?
それでは、中国で仮想通貨の取引や保有が活発に行われるようになったのはなぜでしょうか。
低コストで海外送金ができること、中国国民の気質としてギャンブル好きが多い、といったことがまず挙げられます。
そして、近年の中国経済の減速も大きな理由のひとつです。これは次に述べる、国民による国への不信感とも関係しますが、経済成長の減速によって、中国政府的な監視機関の監視がない仮想通貨による資産管理・運用に目を向けられたのです。
これに加えて、国民による国への不信感も考えられます。中国では、社会的インフラの未発達や法定通貨(人民元)への不信感など社会問題に伴う政府への不満から、仮想通貨への投資によって自分の財産を守りたいという人が増えているのです。
中国の仮想通貨規制の経緯
中国政府による規制の経緯
冒頭で述べたように、中国では現在、仮想通貨取引所が閉鎖され、実質的に取引が認められていないという特殊な状況にあります。ここでは、このような特殊な状況をつくりだした仮想通貨取引の経緯を簡単に振り返ります。
中国では、2012年にビットコインの普及が始まりましたが、2013年に中国政府が国内の金融機関によるビットコインへの関与を禁止したのをきっかけに、ビットコインブームは下火に向かいました。
その後、中国経済の減速などを理由に、2016年頃から再び取引ブームが訪れました。2017年9月に中国政府は、ICOを禁止しましたが、これは実質的に取引所の閉鎖と国内の仮想通貨取引禁止を意味しました。
続いて、2018年1月にはビットコインのマイニング規制が通達され、現在に至っています。
以上のように、中国政府は仮想通貨取引に対して厳しく規制してきましたが、これはICO詐欺やマネーロンダリングの防止のためだと当局は主張しています。
また、これら一連の規制は、資本規制の一環であると考えられています。中国では、銀行を経由した外為両替や送金は従来から規制されていましたが、ビットコインなどの仮想通貨の利用によって、海外との資金のやり取りがより便利になりました。中国政府からすると、これは国外への資本流出を意味します。
仮想通貨取引禁止後の中国
中国で仮想通貨取引が実質的に禁止されて、中国の取引所はどうなったのでしょうか。
2017年9月の規制後、多くの中国取引所は香港や近隣諸国で事業を展開しようとしました。例えば、中国の主要な取引所であったOKコインは、香港に移転しOKExとして再スタートを切りました。同じくHuobiは、シンガポールを本拠地としてHuobi Proとして事業を継続することになりました。
また、日本や韓国、アメリカで仮想通貨取引が活発になっていますが、中国の規制が関係していると言われています。すなわち、人民元が円、ウォン、ドルにかたちを変えて、仮想通貨取引に利用されているということです。
特に日本では、仮想通貨ブームと言われているにも関わらず、実際に取引をしている人や知識を持っている人が思ったよりも限られています。これは、仮想通貨取引が禁止されている中国からの資金流入の可能性が関係していると想像されています。
一方、2018年1月にビットコインのマイニングへの規制が通達されましたが、マイニング業者も海外移転によって事業を継続しようとしています。中国第2位のマイニング企業であるビットマインは、カナダとアメリカでマイニング事業を行っており、シンガポールへの移転も計画しています。他にもインドやアイスランドなどで事業展開もしくはその計画をしている業者もいます。
このように、中国の仮想通貨取引規制は仮想通貨の価格だけではなく、これに関連する事業環境にも大きな影響を及ぼしているのです。
まとめ
今回は、中国の仮想通貨事情と中国政府による規制に注目しました。
仮想通貨取引の実質的な禁止にも関わらず、送金や投資をメインに中国人の間で仮想通貨は人気です
2013年の中国金融機関によるビットコインへの関与の禁止、2017年のICO禁止、2018年のビットコインのマイニング規制は、その後の仮想通貨価格下落の要因のひとつだと言われています。
また、最近では、中国の中央銀行である中国人民銀行が、独自の仮想通貨を発行する計画をしていると報じられており、その他の仮想通貨への影響について論じられています。
以上のように、中国政府による方針や政策が、仮想通貨を取り巻く環境に大きく影響してきました。今後もこのような状況は続くと考えられ、仮想通貨に対する中国の動向から目が離せません。