2017年は、「仮想通貨元年」と呼ばれ、様々な仮想通貨が飛躍する年となりました。世界中が仮想通貨投資で盛り上がり、世界各国で仮想通貨に対する規制や法律ができるほどでした。日本でも、「億り人」という言葉がホットワードとなったように、沢山の方々が仮想通貨投資で莫大な利益を得ています。
しかし、その反面仮想通貨投資で莫大な損失が出た人々もいるでしょう。2018年1月半ば頃から、多くの仮想通貨は、価格が大きく下落しました。今回ご紹介する「イーサリアム」も、今年に入り価格が大きく下落した仮想通貨の中の一つです。
では、今年に入り大きく価格が下落したイーサリアムですが、一体今後はどうなるのでしょうか。概要、将来性をご説明するとともに、ズバリ2018年のイーサリアムの展望を予想していきたいと思います。
それでは、まず概要から説明して参ります。
目次
1.イーサリアムとは
イーサリアムはビットコインとも並ぶ超巨大仮想通貨であり、現在1,000を超える銘柄が取引されるアルトコインマーケットのトップを走る仮想通貨です。2013年に、当時20歳にも満たなかった優秀な技術者ヴィタリック・ブテリン氏により設計開始され、2014年7月にリリース、2015年頃には日本の取引所でも取引されるようになりました。
2014年に設立されスイスに本部を置く「イーサリアム財団」がイーサリアムプロジェクトが調達した資金を管理しています。ヴィタリック・ブリテンを始めとする開発者が世界中に存在し、日々イーサの開発を行っています。開発者にはその貢献に応じて報酬が与えられることから、多くの優秀な技術者が開発に参加しています。
上記のように資金管理の財団や開発者は存在するものの、ビットコイン同様コインの中央管理をする団体は存在していません。世界中に分散する端末(ノード)によって構成されるP2Pネットワークシステムとなっています。
2.イーサリアムを取り巻く過去の出来事
皮肉なことですが、イーサリアムをここまで有名で巨大なコインにしたのはイーサリアム自体の性能に加えて、過去の不名誉な事件によるところが非常に大きいです。それが、「ハッキング事件」と2回に渡る「分裂騒動」です。イーサを理解する上で避けて通れない2つの事件の概要を紹介致します。
イーサリアムの「ハッキング事件」
2016年6月、イーサリアムから派生した仮想通貨である「THE DAO」の脆弱性を突いて母体であるイーサリアムがハッキングされる事件がおこりました。被害は360万ETH、当時の時価にして52億円にものぼりました。この事件に対して、コミュニティでは3つの対策案が出て来ました。
- 1つは、「何も対応しない」案。プロトコル以外の問題に対して対応策を講じるのは「非中央集権的」というイーサの理念に反するというのが理由です。
- 2つ目の対策案が「ソフトフォーク案」。既存のルールを変更することで資金回収する試みでしたが、時間がかかることなどが理由で採用されませんでした。
- 採用されたのは3つ目の案「ハードフォーク案」。ハードフォークを行うことで通貨をハッキング以前の状態に戻しハッキング自体を無かったことにしてしまう解決策です。
これによって、ハッカーは盗み出した通貨を使用することができず、事態は収束しました。
イーサリアムの「分裂騒動」
イーサリアムのハッキング事件に際しての対応に強く反発したのが前項で1つ目の「何もしない案」を提唱していた人々です。彼らは今回の対応によってブロックチェーンが恣意的に書き換えられてしまうことに違和感を抱くとともに、イーサの被中央集権的な理念が損なわれてしまったことを危惧していました。
そんな人々が集まり、ハードフォークでイーサリアムに取り残された方のコインの開発を続けることに。これが「Ethrereum Classic(イーサリアム クラシック)」の始まりです。
他にも特に事件絡みではは無いもののDApp開発を目的としてイーサリアムから「Ether Zero(イーサ ゼロ)」などのコインが分岐した過去もあり、当時話題を呼びました。
3.イーサリアムの特徴
数あるアルトコインの中でもダントツの成長を見せたイーサリアムですが、他のコインとは異なる特徴があります。それが、「スマートコントラクト」と「ハードフォークアップデート」です。こちらでは、2つの特徴について説明して参ります。
スマートコントラクト
イーサリアムでは、「スマートコントラクト」という技術を組み込んでいます。スマートコントラクトを組み込むことで、ブロックチェーン上に送金情報と共に、送金する上での条件も追加で記入が出来ます。例としては、「〇〇さんから1BTCの着金があった場合にのみ、〇〇さんへ10ETH送金する。」といった様な内容の記入が可能です。この技術が評価され、現在ではスマートコントラクトを導入した仮想通貨もいくつかありますが、その原点がイーサリアムです。
スマートコントラクトとは、簡単に言えば謂わば「プログラミングによって書かれた契約」。これを仮想通貨の特徴であるブロックチェーンに書き込むことで、契約の改ざんや不履行を防ぐことができるのです。
ハードフォークアップデート
ハードフォークのアップデートがあらかじめ予定されているのもイーサリアムの特徴の一つ。
ハードフォークアップデートとは、簡単に言うと「仕様を変更することで、ブロックチェーンが互換性のない新旧に別れる」ようなアップデートのことです。
ハードフォークアップデートによってブロックチェーンは2つに分かれますが、参加者の賛同を得て行われる仕様改善のためのアップデートなのでコイン自体が分裂するわけではなく、新チェーンのみが使用されることになります。
旧コインには「ディフィカルティボム」と呼ばれる、ブロック生成を困難にする処理もなされており、新しいチェーンを使用するインセンティブが働くようになっているのです。
尚、過去には予定されたハードフォークアップデートの他に分裂を伴うアップデートも行われており、Ethereum Classic(イーサリアム クラシック) 、Ether Zero(イーサ ゼロ) が新通貨として生成されました。詳しくは先述の『イーサリアムの「分裂騒動」』の項目を参照してください。
イーサリアムの4段階のハードフォークアップデートのうち、2018年4月時点で3段階目の前半までが完了。3段階目後半(通称:コンスタンティノープル)と4段階目(通称セレニティ)の実施時期は未定となっていますが、2018年中に行われるのではないかという見方も強いです。
4.将来性
ビットコインの本質が「ブロックチェーンの信用を担保にした通貨としての価値」であるのに対し、イーサリアムの本質は「スマートコントラクトのプラットフォームとしての価値」です。つまり、ビットコインの価格上昇が通貨としての信頼の上昇に伴うのに対し、イーサリアムは技術的な有効性を認められることでも価値が上がって行くのです。
実際にイーサリアムを利用したアプリケーションは日々誕生しています。イーサリアムを利用したICO(仮想通貨を利用した資金集め)アプリケーションが多数発表されている他、トヨタ、サムスン、マイクロソフトなどといった超大企業もイーサリアムとパートナーシップを展開しており、イーサリアムを活用したプロジェクトの開発が企業を巻き込んで日夜進められています。
従って、今後もイーサリアムには注目が集まると予測されます。
しかし、イーサリアムはまだまだ実験段階にあり、技術的な不安要素も抱えています。また、イーサリアムを用いたアプリケーションはまだなかなか世間には普及していないのも事実です。しかし、今後技術面での改善が進めば、イーサリアムは投資家のみならず世界中の技術者や経営者の注目を集めることになりそうです。
5.2018年のイーサリアム
2018年、イーサリアムの価格はどのように変動していくのでしょうか。2018年に予定されているイーサリアムを取り巻く出来事から予測していきたいと思います。
1.セレニティアップデート
イーサリアムの4段階目のアップデートである「セレニティ」は2018年度に行われるのではないかという予測が多く立っています。セレニティアップデート完了後はPoWからPoSに移行することで発行上限が設定されることが予測されています。また、予定されていた全てのアップデートが完了しイーサリアム・プロジェクトが一旦完成することになります。
今までのイーサリアムアップデートの際には10%前後価格が上がり、完了後に元に戻るという傾向がありました。しかしセレニティアップデートの性質を踏まえると今回は安定して値上がりする可能性も高いのではないかと期待されています。
2.上場投資信託への上場開始
現在、一部で進んでいるのがイーサリアムの上場投資信託への上場開始。世間的に見れば仮想通貨全体に対する評価はまだまだ十分に高いとは言えないのが現状ですが、一般的な金融商品と並んで取引されることでイーサリアムの信頼や取引量が増え、価格が上昇して行く可能性があります。
もちろん技術的な不安要素が完全に拭い去れるわけではありませんが、上記2つの追い風を受け2018年は安定して価格が上昇する可能性が高いと言えるのではないでしょうか。価格が比較的下げ止まりしているうちが買い増し時かもしれません。
おわりに
2014年に19歳の天才技術者によって開発されて以来、今ではビットコインに次いで2位、アルトコインの中では首位をキープしているイーサリアム。
まだまだ技術的にも問題はありますが、「スマートコントラクト」は将来様々なものに応用される可能性がある技術あり、今後も成長が予測されます。引き続きイーサリアムの動きから目が離せません。