みなさんはイーサリアムクラシックという仮想通貨をご存知でしょうか。仮想通貨時価総額ランキングでは2位に位置するイーサリアムは、多くの方に人気のある仮想通貨でみなさんもご存知だと思います。この似たような名前を持つ2つの仮想通貨の違いをみなさんはご存知でしょうか。
おそらく、イーサリアムクラシックという名前をご存知な方は多いと思いますが、その特徴や概要までをご存知の方は少ないのではないかと思います。なぜかというとイーサリアムクラシックはイーサリアムから分裂した仮想通貨で、この2つの通貨に大きな違いはないからです。
そこで今回はみなさんにイーサリアムクラシックとはどういった仮想通貨なのかをわかりやすく解説いたします。この記事を読めばイーサリアムとの違いも理解できますよ。
イーサリアムクラシックの誕生経緯
The DAO事件によって何者かにイーサリアムが盗まれてしまう
The DAOとは、イーサリアムブロックチェーン上にあるスマートコントラクトを利用した分散型投資ファンドのことです。2016年5月にThe DAOのICOが行われ約1億6000万ドルが調達されました。しかし6月にThe DAOがハッキングを受け口座から360万ETH(約5000万ドル相当)が盗み出される事件が起こります。この事件ではイーサリアム側には何の問題もありませんでしたが、The DAOが書いたコードの穴を突いた巧妙な手口によって犯人のDAOアドレスに360万ETHが送金されました。
The DAOはこういった盗まれることも想定していたのか、幸いなことにThe DAO内の口座から移動した資金は27日間利用することはできないようになっており、時間の猶予が与えられました。そしてイーサリアムコミュニティは解決に向けて議論が交わされました。
一部のイーサリアムコアメンバーが反発
解決までの選択肢は3つありました。
- 盗まれたイーサリアムを諦め犯人に明け渡す。
- ソフトフォークを行い、犯人のDAOアドレスを無効化し資金を凍結させる。
- ハードフォークを行い、盗まれた事実をなかったことにする。
一つ目の案は、そのまま犯人に盗まれたイーサリアムを諦めて渡してしまうことです。
二つ目の案は、犯人が送金したアドレスを無効化することで、送金も何もかもできないようにします。しかし、この方法では盗まれたイーサリアムは利用できなくなり被害にあった人たちを救済することはできません。
三つ目の案は、ブロックチェーンに記録された取引履歴を360万ETHが送金される前まで遡り、盗まれた事実をなくしてしまうことです。この案が唯一被害者を救済する方法です。
結果としてイーサリアムコミュニティで投票が行われ、多くの人たちが3番目の案であるハードフォークを行うことを支持しました。
しかし一部のコアメンバーが、イーサリアムは非中央集権を原則としたものであり、取引履歴を書き換えるのはブロックチェーンの不変性に反するとして強く反発しました。議論はもつれましたが事態は急を要しており、ハードフォークに賛同できない一部のコアメンバーはイーサリアムと分岐することに決めました。
ハードフォークによってイーサリアムクラシックが誕生する
ハードフォークによってイーサリアムに適用されていたこれまでのルールは、新しいルールが適用されます。これまでに適用されていた旧ルールの互換性をなくすことで、2つのルールに則った仮想通貨が存在することになります。これがハードフォークです。
2016年7月にイーサリアムのハードフォークが実施されThe DAO事件は解決へと向かいました。しかし、新ルールを適用した現在のイーサリアムと、これまでのルールに則ったイーサリアムクラシックの2つに分裂し、イーサリアムクラシックが誕生しました。
イーサリアムクラシックの特徴
イーサリアムクラシックは、イーサリアムからハードフォークした仮想通貨なので似たような特徴をもっていますが異なる部分もあります。ここではイーサリアムとの違いをご紹介いたします。
IoTアプリケーションに焦点を当てる
イーサリアムを利用して現在1000種類以上のDAppと呼ばれる分散型アプリケーションが開発されています。そのなかにはキャラクターを育てて売買できるようなゲームや、予測市場に貢献したり不動産取引を円滑に行うプラットフォームなど多種多様なアプリケーションが存在します。
対してイーサリアムクラシックは、人とモノをインターネットでつなげ快適な生活が送れるサービスを作るIoTアプリケーションのプラットフォームになることを目指しています。イーサリアムクラシックの特徴の一つであるスマートコントラクトによって、取引を自動化し物事を円滑に行えるようになります。たとえば、自動車のリース契約では車についてるモニターに従うことで簡単にプランを選び保険を契約し利用することができるようになります。これまで必要だったコストをかけることなく、ブロックチェーンに記録された取引履歴は改ざんされることもないので安全に利用することができます。
イーサリアムクラシックからハードフォークしたカリスト(Callisto)
カリストは、取引履歴を処理するのが遅く送金詰まりを起こし、結果として送金速度が遅くなってしまうスケーラビリティ問題を解決するためのプロジェクトです。カリストは、イーサリアムベースの独立したブロックチェーンで、イーサリアムクラシックとつながることで取引履歴の処理速度が向上したり、消費電力を抑えることができます。
ハードフォークと聞くとイーサリアムクラシックがまた分裂したのかと思われますが、そうではありません。イーサリアムクラシックの保有者にはカリスト上でやり取りできるCLOコインが1:1の比率で付与されました。このCLOコインはコストをかけずにイーサリアムクラシックと簡単に取引することができます。
PoWこそが非中央集権であると考えている
イーサリアムのコンセンサスアルゴリズムは現在PoW(Proof of Work)ですが、PoS(Proof of Stake)への移行が計画されています。イーサリアムクラシックもイーサリアムブロックチェーン上で構築されているのでこの移行に準ずる必要がありますが、ここでもイーサリアムクラシックコミュニティは反発しています。
イーサリアムコミュニティは、PoSの仕組みは電力消費を抑え、51%攻撃にも耐性をもっているのでPoWよりも優れていると主張していますが、反対にイーサリアムクラシックコミュニティは、PoWのマイニングには継続的な投資が必要でありコストをかけることで安全性を担保していると考えています。さらにPoSのシステムは多くの通貨を保有されることで権力を握られてしまうことを危険視しており、銀行や金融機関の資本力の前ではいともたやすく掌握されると主張しています。こういったことでまたもや2つのコミュニティは対立してしまいます。
そして先月末にイーサリアムクラシックはハードフォークが行われ、ディフィカルティボムが無効化されます。ディフィカルティボムは、イーサリアムがPoS移行に向けて設定しておいたマイニング難易度を上昇するための機能です。これを無効化するということは、マイニングを続行しPoWを継続していくということになります。イーサリアムクラシックはPoWが最も非中央集権的なアプローチであると考えています。
イーサリアムクラシックには発行上限がある
どの仮想通貨にも発行上限は決められていますが、イーサリアムには発行上限がありません。イーサリアムクラシックにもはじめは発行上限がありませんでしたが、後々に2億1000万ETCから最大で2億3000万ETCまでの発行上限(完全な発行上限は分からず、この間で決まるようです)が設けられました。この金融政策によって、イーサリアムクラシックの希少価値が高くなり、ネットワークの安定を図ることができます。イーサリアムクラシックの価値が上がるとそれを求めてマイナーが集まってきます。マイナーが集まるとセキュリティレベルが上がりネットワークが安定します。仮想通貨の成長には安定性と使いやすさが重要でそれによってコミュニティも盛り上がっていくと考えているようです。
イーサリアムクラシックの将来性
非中央集権を追及し続けるコミュニティ
ここまでをみていただけると、イーサリアムクラシックコミュニティが非中央集権に強いこだわりをもっていることが分かります。ブロックチェーンの不変性を尊重しており、PoWもビットコインがこれまでハッキングされたことがないと考えると一番非中央集権的なシステムといっても間違いではありません。その確固たる信念を持ったイーサリアムクラシックコミュニティならこれからも成長をし続けるのではないかと思います。仮想通貨の時価総額ランキングで8位に位置するCardanoを開発しているIOHK(Input Output HongKong)はイーサリアムクラシックの開発も行っています。技術力も他の仮想通貨に遅れを取っているということはありません。
イーサリアムと比べると開発力に乏しい
イーサリアムから離脱しイーサリアムクラシックのメンバーになったのは当時のコミュニティの1割程度の人数でした。さらにイーサリアムの開発を行うためには専門的な言語を使う必要があり、理解している人もまだまだ少ないので技術者を入れることも困難です。イーサリアムと比べると開発力にはかなり差がひらいており、時価総額にも表れています。
しかしイーサリアムクラシックコミュニティは開発力よりも安定性を重要視しており、安全性が損なわれるのであれば開発速度も遅らせると発言しています。安全性を重視することで不可逆的なエラーでユーザーを損失させないようにしています。
基本情報
通貨名 |
イーサリアムクラシック |
通貨単位 |
ETC |
承認方式 |
PoW |
発行上限 |
2億1000万~2億3000万ETC |
既発行量 |
102,108,618 ETC |
発行年月日 |
2016年7月30日 |
公式サイト |
https://ethereumclassic.org/ |
おわりに
いかがでしたでしょうか。この記事でイーサリアムとの違いを少しでも知っていただければ嬉しいです。イーサリアムクラシックは同じIoT分野の仮想通貨であるIOTA(時価総額ランキング9位)よりも開発陣が優れているという声もあります。分散型アプリケーションではイーサリアムに軍配が上がりますが、これから必ず発展していくIoTの分野で注目される仮想通貨であるのは間違いないと思います。
ご覧いただきありがとうございました。