一時期のブームが収まったとは言え、依然として投資への関心が高まる仮想通貨。
日本国内でも、SBI証券、コインチェックを買収したマネックス、そして、三菱UFJなど続々と大手金融機関が参入を表明。また基幹技術であるブロックチェーンの中央銀行デジタル通貨をはじめとした、様々な分野への応用など、2018年度はより仮想通貨への注目が高まるといわれています。
こうした中で、長期的な視座で、投資を行う既存株式市場の投資家、機関投資家達が市場へ参入、仮想通貨そのものの価値が高まることも期待されているのです。
その一方で、依然としてボラティリティの高い仮想通貨市場、一獲千金を目指した多くの投機目的ユーザーを引き付けているのも事実であり、そんな仮想通貨の魔力に魅了された投資家たちをからめとろうという詐欺師たちも大勢いるのです。
ここでは過去に起こった、あるいは現在進行中の仮想通貨詐欺案件をまとめてご紹介するとともに、身を守るためには何が必要か合わせてご紹介していきたいと思います。
目次
仮想通貨詐欺案件まとめ
それではまずはこれまでに起こった仮想通貨詐欺案件をまとめてみていきましょう。
TelegramのICOに便乗した詐欺
Telegramはロシア発のSNSです。メッセージを暗号化することでプライバシーを担保することができるという画期的な特徴を有しています。
インターネット上での規制、検疫が激しい、東欧諸国を中心にユーザー数増やし、2億人ともいわれる莫大なユーザーを獲得しました。現在ではLine、whatsappなど人気SNSに次ぐ、世界規模のサービスとなっています。
こうした一般利用以外にも、匿名性の高さから、仮想通貨をはじめIT関連スタートアップのPR手段、そして投資目的のユーザーの情報獲得手段としてもTelegramは広く利用されているのです。
こんなTelegramから、重大な発表がされました。それがTON(Telegram open Network)です。独自仮想通貨Gramを利用した分散型アプリケーション(dApps)などのプラットフォームを設立する構想で、その手始めとして、TelegramはGramのICOを行い、資金調達を行う計画であることを発表しました。
当初の調達予定金額は12億ドルで、史上最大規模のICOをセールということで話題となったのです。
ただ、このICOセール、ユーザー側が望んだ形にはなりませんでした。
2018年3月頃に、一般向け、そしてクローズドでICOをセールを行うことをTelegram側は発表していたわけですが、結局のところ、一般顧客向けのセールは行われていません。
非公開のプライベートセール自体は3月に行われており、17億ドル(日本円にして約1870億円)という莫大な資金を集めることに成功したといわれています。
このことを受けてか、5月の初頭には一般向けトークンセールの中止が発表されました。
Telegram側からの情報や対応には不透明な部分も多く、独自通貨であるGramへのユーザーの期待も高く集まっていたことから、3月からここまで(2018年5月)の間、情報が錯そうする、事態となっています。
Telegram ICOとうたったフィッシング詐欺サイトが横行、Telegramの創設者であるニコライ・ドゥーロフ氏が公式に詐欺についてコメントするなど、被害が拡大しました。
現在も詐欺サイトは残っているようです。公式にニコライ・ドゥーロフ氏は一般向けに仮想通貨「Gram」の発行を行うことは現時点では考えていないことを発表しています。
トークンの配布をうたっているサイトを見つけたら詐欺案件だと考えていただいて問題ないでしょう。
フロイド・メイウェザーを利用して顧客を集めたCentra
また仮想通貨関連の詐欺案件として最近注目を集めたのが、仮想通貨Centraによるものです。
もともと、このCentraは仮想通貨を利用したデビットカード構想を掲げており、大手金融機関と提携を結んでいることを強みとしていました。
また、元ボクシング世界チャンピオンである、フロイド・メイウェザー氏など著名人を広告塔に起用、大きな注目を集めました。
ですが最終的に創設者3人が虚偽の情報をもとにICOを行い不正に金銭を詐取したとして逮捕され、実際には提携企業とされていた、VisaやMaster Cardといった優良企業とは全く関係性がないことが明らかになったのです。
結局バイナンスでの上場は廃止となり、最終的な被害額は数百万ドルにも及ぶといわれています。
大規模な詐欺の疑いも Onecoin
現時点で、確証は得られていませんが、設立当初から詐欺ではないかといわれている仮想通貨もあります。それが、「onecoin(ワンコイン)」です。
オックスフォード大学の法律学博士号を取得し、あのマッキンゼーの共同設立者も務めたルジャ・イグナトーバ博士が設立した通貨で、2015年ブルガリアで誕生しました。
1000万人のユーザー、世界100万店舗で利用可能など非常に魅力的なうたい文句が並びますが、現時点でマイニングの流れも不透明、仕組みも中央集権的な組織を有するため仮想通貨といえないなど、設立当初から疑いの目が投げかけられていました。
2017年頃からは実際に捜査が行われることもあり、5月にはカザフスタンで詐欺として起訴、次ぐ7月にはインドで関係者23人が逮捕されています。
また、2018年1月17日にはブルガリアにあるワンコイン本部にドイツ検察局から要請を受けた、ブルガリア法執行部門とEU犯罪対策部門による強制捜査が行われました。つい先日5月23日には中国でワンコイン関係者4名が告訴されています。
仮想通貨詐欺が多い要因
こうした大規模なもの以外にも、投資を持ち掛けて、金銭を詐取する。Airdropに見せかけて金銭を詐取するといった多様な詐欺が仮想通貨業界では頻発しているのが現状です。
仮想通貨関連メディアであるコインテレグラフ紙が報じたところによれば、オーストラリアでは昨年だけでも210万ドルほどの仮想通貨関連詐欺被害が報告されており、その規模は大きくなっているのが現状です。
では一体、なぜ仮想通貨ではこのように詐欺が頻発するのでしょうか。要因は大きく分けて三つあると考えられます。
顧客保護関連の規制がほとんどない
まず一つは現時点で、投資家、ユーザー保護の規制がないということです。2018年に行われたG20では国際的な規制枠組み設立に向けた共同声明が採択されました。ですが、依然として世界各国で共有された規制はありません。(2018年7月に具体的な規制案が提案される予定)
特に仮想通貨を利用した資金調達法である、ICOに関しては問題が大きいと言えるでしょう。現状、出資者が受け取ることができるのは発行されたトークンだけです。仮に案件が詐欺ではなかったとしても事業に失敗して上場が廃止されるようなことがあれば、トークンはただの電子のごみになってしまいます。
こうしたリスクがありながらも、顧客を守るためのルールはないのです。Googleや大手SNSであるFacebookは仮想通貨関連の広告出稿を禁止するなどユーザーが詐欺案件の被害にあわないようにするための対策に乗り出してはいますが、抜本的な解決にはなっていないのが現状です。
詐欺の立証が困難
もう一つの要因は詐欺の立証が困難であること。仮想通貨はボラティリティが高く相場は常に変動しています。また、インターネットをベースにしていることから拠点を分散することも可能です。こうした特徴を持つため、簡単には詐欺を立証することができません。
また、仮想通貨がらみの犯罪を現行法でどのように位置づけるかは今のところ不透明です。そのため出資法、証券取引法の観点からは罪に問われない可能性もあり、重罪に問うことが難しいことから、詐欺の参入障壁が低いとする意見もあります。
技術がいまだ試験段階である
また、こうした要因に拍車をかけているのが、仮想通貨がいまだ試験段階にあるということです。ビットコイン、リップルをはじめ依然として仮想通貨が現実社会で大々的に利用されたユースケースはありません。実験的に使っているところです。
つまり、ICOに限らず、すでに発行されている通貨に関しても「将来こうなるはずだ」という予想のもと購入しなくてはなりません。
加えて、専門家ですら意見が分かれる中、専門的な知識を有さない一投資家が、簡単にその技術を理解することは難しいでしょう。
仮想通貨を運営するスタートアップ企業側からすると技術やそのユースケースを説明することの困難さが資金獲得の難しさにつながっているわけですが、逆を行ってしまえば、投資家たちをだますような誇大広告をうつことも容易にできてしまうのです。
仮想詐欺から身を守るためには
さて、ここまでは相次ぐ仮想通貨詐欺案件のご紹介と、仮想通貨詐欺が増える要因についてみてきました。最後に仮想通貨詐欺から身を守るためにはどうすればいいか考えていきたいと思います。
正しい情報を知る
まず大切なのは仮想通貨はそもそも何なのかという正しい情報を知るということです。そもそも仮想通貨は革新的な決済方式として生み出されました。
通貨に似た媒介方法をとることから便宜上「仮想通貨」と呼ばれてはいますが、そもそも資産として扱われることを前提としているわけではありません。
また、仮想通貨の中にはdAppsのようにサービス内で使われてこそ価値のあるような通貨もあり、価格が上がってしまうことによる弊害も報告されています。
有名な例では、イーサリアムの創設者であるヴィタリック氏が現在のような、仮想通貨の高騰はサービスそのものに悪影響を与えるという見解を表明しているのです。
ここに挙げたのはあくまでも一例にすぎませんが、仮想通貨が生まれた背景や技術的な最低限な知識を知っておけば、おかしな情報に振り回される必要はなくなるでしょう。
当サイトでも初心者の方向けの解説記事がありますので、気になる方は見てみてください。
情報獲得手段を複数持つ
情報獲得手段を複数持つことも大切です。現在仮想通貨投資人口は増えており、ブログやtwitterなどのSNSを通じて情報発信をしている投資家、仮想通貨ユーザーも増えています。
公式サイトや一部ネット情報などを参考にするのではなく、複数情報獲得手段を手に入れ、比較していくことが大切にでしょう。
ホワイトペーパーを読み込む
もう一つは仮想通貨のホワイトペーパーを読み込むということ。現状仮想通貨を正しく知るうえで、数少ない情報元の一つです。
技術的なことのほかにも仮想通貨の目的、目指す部分や関連業界について記されていることも多く、投資の助けにもなります。
仮にホワイトペーパーや、それに値する情報がないようであれば、詐欺の可能性もあるでしょう。技術的な知識がないという場合でもホワイトペーパーが発行されているかどうかだけでも確認してみてください。
チームメンバーを確認する
そしてこれも大事です。仮想通貨関連のスタートアップでは開発チームメンバーが公開されていることがほとんどです。
チームを確認してみたら、一度インターネットで検索してみることをお勧めいたします。非常に魅力的なチームだが、調べてみたら、どうやら著名なプログラマーのプロフィールを無断転載しているだけだったなんてことも十分にあるのです。
前述のTelegram関連の詐欺の一つでは、チームメンバーほぼすべての役職になぜか、Telegram創業者の名前が登記されているというありえないものも存在していました。
ありえないような詐欺が行われているのです。ちょっと疑わしいと思ったら調べてみるのが詐欺にあわないコツといえるでしょう。
まとめ
最後にご紹介した、詐欺から身を守るために気を付ける点は一見非常に初歩的なことです。そんなことでだまされるはずがない、とお思いの方もいることでしょう。ですが、仮想通貨市場ではこうした信じられないほど初歩的な人を馬鹿にしているとしか思えないような詐欺案件があり、そして実際に騙されている人が多発しているのが現状です。
まだまだ、技術的にも発展段階にある仮想通貨市場、仮に詐欺ではなかったとしても、今後どのような価値を持つかはわかっていません。
リスクやこうした仮想通貨そのものの問題を理解し,投資を行っていくことが大切になります。