仮想通貨の取引について議論する際によく出てくるのが「分散型取引所」VS「中央集権型取引所」の構図。この2つの違い、急に聞かれてしっかり答えられますか。後者が人によって管理がなされているのに対し、前者は管理する人がいない自律型の取引所である、ということはなんとなくご存知の方も多いかと思いますが、それぞれの詳しい特徴やメリットや問題点などに踏み込んだ場合すぐに答えられるという方は少ないのではないでしょうか。そこで今回は、中央集権型の取引所と比較しつつ新時代を担って行くと考えられている分散型取引所について特徴やメリットを紹介していきます。
分散型取引所(DEX)とは
トラストレスな取引が可能である
分散型取引所は、信頼できる第三者を介在させることなくトラストレスに取引することができます。中央集権型の取引所で取引を行う場合、資産を一旦取引所に預けるので、取引所を信頼しなくてはなりません。一方分散型の取引所では中央集権型の取引所と同様の預け入れ・引き出し・売買などの取引を行う際にも全て人の手を介さず自動で行われるため第三者を信頼する必要がありません。分散型取引所でで売買された履歴は全てブロックチェーン上に記録されますが、ご存知の通りブロックチェーンでは半永久的に改ざんできない形でノード全体に記録されていくため、取引記録が改ざんされたりするリスクからもフリーになります。
外部からの攻撃に強い
ブロックチェーンに取引を記録する際にはノード全体に記録を行います。全てのノードは同じ台帳をシェアしています。従って、無数にサーバーが存在しているのと同様の状態となっているため一部のノードが攻撃を受けたとしても資産が消えることがありません。中央集権型の取引所であれば中央のサーバーに対して攻撃を受けた場合に資産が消失してしまうリスクを抱えています。
資産と情報の管理は個人で行う
中央集権型の取引所において、顧客の資産は取引所が纏めて管理を行っています。もちろん必ずしも1カ所で管理しているわけではなく、内部で分散して保管することでハッキング等のリスクに対する対策を取っている場合が多いです。しかし、その対策状況は顧客からは可視化できない、いわば「ブラックボックス」的なものであり、確認することはできません。取引所側もハッッカーから資産を保護するために情報を公開しないことが一般的です。しかし、例えば2018年初にコインチェック社でNEMのハッキング被害が発生した際、顧客のNEM資産は一カ所のNEMアドレスにまとめて管理されていました。
一方、分散型取引所においては秘密鍵等の管理は顧客が行うので、ハッキングを行うためには顧客のアカウントをハックするかブロックチェーンの記録自体を改ざんする他無く、障壁が非常に上がります。
分散型取引所のメリット&デメリット
分散型取引所がどのようなスキームで動いておりどのような特徴を持っているかについて簡単に説明してきました。以下では更に理解を深めるために分散型取引所を利用するメリットとデメリットを紹介していきます。
分散型取引所を利用するメリット①技術的にセキュアである
2017年頃から世界トップクラスの技術者集団によって開発が始められた分散型取引所の技術。当然最新の技術であり、トップクラスの知識の結晶と言うべきものです。また、ブロックチェーン自体が難攻不落で非常にセキュアな技術と言えます。分散型取引所においてハッキングを行う場合ブロックチェーンの履歴を改ざんする必要がありますが、非常に困難であり実質不可能と考えられます。
分散型取引所を利用するメリット②政治的に安定している&破綻の恐れが無い
特定の国に拠点を置いて経営されているわけではないので、政治介入によって急に経営方針が変わったりするリスクがありません。例えば中国ではたびたび仮想通貨関連の規制が強化されており、業界全体がかなり振り回されている状況です。分散型取引所は世界中にノードが分散しシステムが自律的に動いているため、ある特定の国の規制によってシステムが止まることはありません。
また、取引所の都合や経営不振によって突然閉鎖してしまう、といったリスクがありません。取引所が急に閉鎖された場合預けていた資産を取り出すことができなくなるので、破綻の恐れが無いのは大きなメリットです。
分散型取引所を利用するメリット③不正が起きにくい
人間の手によって管理されている中央集権型の取引所においては内部の人間により不正が起こる可能性がありますが、分散型においては起こりにくいというメリットがあります。大手の取引所ではあまり起こりませんが、海外の中小の取引所では送金したはずのコインが消失したりといった事態に陥りかねません。分散型取引所であれば予め決められたシステムに則って自動で動作が行われるため、透明性が高く、謎に資産が消失したりする心配がありません。
分散型取引所を利用するデメリット①情報量が少ない/日本語の情報にアクセスできない
ここまで、分散型取引所を利用するメリットについてお伝えしてきました。しかし、もちろん分散型取引所にはデメリットもあります。1つ目が、分散型取引所に関する情報共有が進んでおらず十分な情報を得にくいという点です。利用者がまだ少ないということも情報共有が進まない一因です。例え情報があったとしても、その多くは英語での情報であり日本語でアクセス可能な情報は殆どありません。実際に分散型取引所を利用する場合であっても、取引所のインターフェースは英語ばかりで、日本語でアクセス可能な取引所は殆どありません。
分散型取引所を利用するデメリット②いちいち手数料がかかる
例えばイーサリアムの場合、オーダーを成立させるためにはGASと呼ばれる手数料を支払う必要があります。分散型取引所にはイーサリアムベースで設立されたものも多く、当然スマートコントラクト利用料として手数料を支払う必要があります。GASはマイナーに支払われる報酬の原資などになります。通常、預金などといった動作には手数料がかからないことが多いので、慣れるまではいちいち手数料がかかることを煩わしく感じてしまうかもしれません。しかし、手数料はATM手数料などと比べると僅少です。システムを長く維持するための費用だと考えると仕方ないのかもしれません。
分散型取引所を利用するデメリット③自己責任で利用しなくてはならない
中央集権型の取引所には取引に責任を持ってくれる中央の主体がいます。従って、何らかの不祥事が起こった場合に保障を受けられる可能性が高いです。実際、コインチェックでNEMのハッキングがあった際にもNEM保持者に対しては保障が行われました。一方、分散型取引所には中央集権型の取引所のような責任者がおらず、何が起こっても自己責任になってしまいます。中央集権型の取引所に関しては今後法整備が進み保障体制も整って行く可能性がありますが、分散型の場合そのような仕組みが整っていく可能性は限りなく低く、もし導入されるとしてもかなり先の話になりそうです。
分散型取引所を利用するデメリット④処理速度が遅い
分散型取引所はまだまだ処理速度が遅いです。従って、短い時間に取引が集中した場合なかなか処理されない恐れがあります。処理速度の問題はブロックチェーンを利用した全てのプラットフォームが直面する問題です。各サービスともに多かれ少なかれ乗り越えてきた壁なので分散型取引所においても将来的に解決される可能性は高いですが、しばらくの間不便に感じる可能性はあります。
おすすめの分散型取引所 厳選3選紹介
ここまでメリットやデメリットを見て、実際に分散型取引所を利用したいと思った方も多いのではないでしょうか。そこで、おススメの分散型取引所を3つ紹介します。自分に合ったものを探してみてください。
Cryptobridge
Cryptobridgeは日本語に対応した分散型取引所です。ユーザーインターフェースも整っており、操作が簡単なので初心者でも扱うことができます。二段階認証は導入されていません。
EtherDelta
名前からもわかる通り、イーサリアムがベースとなって構築された分散型取引所です。取り扱っている銘柄が非常に多いですが、イーサリアムから誕生したトークンが主となっています。しかし、中には取引高が少なすぎて売りたくても売れないような銘柄も混じっています。うっかり買ってしまうと固定資産化してしまう可能性もあるので注意が必要です。
Open ledger
bitsharesが打ち出しているサービスの一つです。世界で最初に作られた分散型取引所と言われており、bitsharesの知名度の高さとも相まって高いブランド力と信用力を持った取引所です。システム基盤はbitsharesのコインであるBTSです。
まとめ:分散型取引所(DEX)は次世代を担う取引所
分散型取引所は既存の中央集権型の取引所の欠点を補いより安心安全なサービスを提供できる可能性を秘めています。トレストレスに取引可能で、ハッキングを受ける可能性も低いというのは資産をやり取りする上で大きなメリットと言えます。
しかし、議論においても実際の資産管理においても、分散型/中央集権型に関わらず取引所を利用すること自体にリスクが伴うということは常に意識している必要があります。しばしば議論の場では分散型と中央集権型どちらの取引所がより安全なのか、という視点がとられますが、そもそもの話、資産を預けるとネットワークに資産を晒し続けることになりますので、どちらを利用しようとリスクが伴います。ネットワーク上に資産がある時、不特定多数の人が偶然・または悪意を持ってアクセスすることができる可能性があり、盗難リスクは0とは言えません。
まだ解決すべき問題は残っているものの、分散型取引所が今後の時代を担って行く重要なインフラの一つとなっていくことは間違い無さそうです。今後も分散型取引所に関するプロジェクトに注目と期待が集まります!最後まで読んで頂きありがとうございました。